2016年11月15日火曜日

イボタロウムシ

 H・R・デーヴィス著(19c末~20c初頭)の「雲南」を読んでいたとき、イボタロウムシという言葉が気になったことがある。こちらの追っていることとは無関係だったので調べることはなかったが、その名はずっと心の底に引っかかっていた。先日、日経新聞を読んでいて、それがイボタノキに付くカイガラムシの一種であることを知る。写真を見ると、木の枝の一部が白い泡に包まれているような感じになっている。イボ・タロウではなく、イボタ・ロウの虫だったのである。この虫の雄の出す白い分泌物が、ろうそくやろうけつ染めなどに使われていたという。中国では雲南省、四川省などで、20世紀初めに、年間5000トンも生産していた。まさにこれが「雲南」に記されていたわけだ。そのロウが使われなくなった今では、この虫のことを知るのは昆虫研究者くらいではないか。
 イボタロウムシを代表としてあげたが、昔は、現在より、自然が身近にあった。時代が古くなるほどその傾向が強くなると思われる。生物や天文、地理など、当時の認識から生まれた知識の体系がある。歴史や漢字を調べるにあたっても、それらを頭に入れておかないと足をすくわれかねない。狸(リ)は中国ではヤマネコ類で、タヌキではないとか。

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