2021年5月1日土曜日

書店の廃業を惜しむ

 中国原書類は京大近くにある中文出版社で手に入れていた。たまたま見ていた街歩きのテレビ番組でその存在を知った。本を買うと、何枚かの注文ハガキや書籍カタログをくれる。カタログを見て、注文ハガキに書名を書き、郵送してもらう。振込用紙と注文ハガキが入っていて、それで支払い、次に欲しくなった本もハガキで頼むという取引が続いていた。必要な書物はあらかた手に入れて、疎遠になっていたけれど、いつの間にか、ネットで注文できるシステムが作られていた。便利になったなと思ったが利用したことはない。最近になって、何か面白い書物はないかなとサイトを探したところ、見当たらなくなっていた。会社名と地図は出てくるのに、百万遍知恩寺の隣にあった場所とは異なる。移転したのかと気になっていた。

廃業か、移転か、確認するためにネット地図が示す場所へ行ってみた。道路の向い側、少し銀閣寺よりの京大の傍である。住宅が並んでいただけで、書店の存在した形跡はない。でたらめ地図であった。何か欲しい本が出てきたときに困る。二十年近く困らなかったのだから、今後も困らないかもしれないけれど、最後の拠り所という精神的な支えがなくなる。残念なことである。歳月というのはこういうことをしてくれる。

銀閣寺通りを西に行って、鴨川の橋を渡った河原町通り北に大きな古書店があり、時々、利用した。ここもどうなっているか見に行ったところ、姿を消していた。こちらが必要とするような専門的レベルの本を揃えるには、目利きの店主の存在が不可欠である。古書店の店主たちは、明らかに、こちらより年上であったから、さもあろうという気がする。

大阪の河童横丁の古書店街もよく利用した。久しぶりに行ってみたところ、紀伊国屋書店の隣に移転していた。こちらが利用していた古書店は、わずかに一店を残すのみ、店も狭くなり、置かれている本の数が少なくなっている。河童横丁にも失望である。

使える店がどんどん減ってゆく。皆無というレベルに近づいてきた。ネットでカバーできるであろうか。パラパラめくって「これ、欲しい」というケースがなくなってしまう。それが楽しいのに。


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