2018年1月7日日曜日

卓上時計

 金ぴかは派手の代名詞然となっているが、どちらかといえば地味だ、この時計は。ドイツという生まれがその性格を与えたのだろうか。はなやかでありながら質実剛健。白い盤面には二つの同心円が黒く細く描かれ、同じ線幅の1から12までの数字を挟んでいる。同心円が盤面に締まりを与えている。秒針がないから、働いているかどうかは、時間がたたなければわからない。これみよがしに秒針を動かす自己顕示の強い時計にくらべ、もくもくと働く下積み労働者といったおもむきだが、しぶい金のふち取りがそうじゃないんだぞと主張している。斜めに切った筒の切り口を下にして、丸い上の切り口に時計をはめ込んだといった形で、盤面は四十五度くらいに傾むく。この筒が金色なのだ。金泥と表現すればいいのか。盤面下方は少し出ばった金のふちにかくれる。座高の高いドイツ人なら、もっと見やすい角度になるのかもしれないと、尻を少し浮かせてみた。やはりそのようである。今はない東急ハンズの時計売り場、鍵をかけた大きなショーウィンドウのかたすみに見つけて一目惚れしたもの。4800円という予算オーバーも気にならなかった。今でもお気に入りだ。時計のメカ自体は、単三電池で動く安っぽいありきたりのもので、デザインが全てだ。歯車状の部品の一部が動くのは見えるが、チクタクという言葉には引導を渡さざるをえない。

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